| シェリルイメージイラスト |
あまりオンラインノベルというものを読んだことがなかったのですが、こちらの作品に出会って目から鱗、抱いていた印象が物凄く変わりました。商業でないからこそ表現できるものもあるのだな~と。 サイトのオン小説リンクが悉く18禁(偶然ですが)なのも、オンだからこそというのが関わってる気がします。 ネタバレを含みますのでご注意ください。
http://novel18.syosetu.com/n9651e/
ご自身の紹介は中世ヨーロッパ風ファンタジー世界を舞台にした、女性向けのソフトポルノ風恋愛小説、とのことです。
女性向けの恋愛小説というとなんだかんだいって相思相愛になり…という、何があろうと愛だけは信じられる話だと思います。 しかし、『魔女とコヨーテ』(以下魔女コヨと略)では、最も信じられないのがそれです。
愛のない肉体関係とかそういうことではありません。愛は感じます。ただ、それが持続する感情でなく、感覚的なものとして描かれています。 現実でそうであるように、ずっと同じ感情を持ち続けたりできないことを魔女コヨの人物たちは知っています。
それでもまだ恋愛の相手が、愛を夢見させてくれるような人物なら甘い恋愛話になるのですが…
冒険者の魔女のシェリルが恋した相手、コヨーテがまた、最も信用のおけない男なんです。
恋愛小説を読んでいててここまで「何だかんだいって最後は助けに来てくれるんでしょ?」ではなく「どうしようもう今度こそ見捨てられるかも…」と愕然としたことは他にないです。
他の恋愛小説のヒーローが無償で助けてくれることを彼がうっかりしてくれるようなことがあれば、物凄く感動します。不良がいいことをすると割り増しになる錯覚です。
読者もシェリルも、完全に騙されています。
コヨーテははじめ、恋するシェリルのフィルターがかった、なんだか万能なような、余裕のあるような、自由で面倒を嫌うとても魅力的な男として出てきます。 しかし段々と印象が変わります。
凡庸では決してないけれどそんなに大した男ではなく、面倒は嫌いだけど、それに重荷を背負えるほど彼自身が強くない。
シェリルはそのことに失望とともに安堵を覚えます。
この作品の魅力のひとつが、リアルな恋の幻想のフィルターだと思います。
きっと冷静であれば欠点にもなるところが、度々シェリルの「こんな素敵な人他にいない」という感情の昂ぶりとして織り込まれ、読者までその恋の幻想に気づけば巻き込まれていました。
シェリルの目を通して、コヨーテの素敵に見えることといったら!
また凄いのが、後半気づいたら男のコヨーテにまで感情移入していたことです。
コヨーテは小賢しいこの魔女を自分のもののように愛しく感じる瞬間があって(自分はシェリルのものではないのに腹立たしい!笑)、こっちまで「僕のシェリル」という気持ちになります。 聡いのに不器用で孤独なシェリルが大好きです。
BLやハーレクイン含め多くの性描写のある恋愛作品は、性描写はあえて描かなくても話は通じるけれど、読者へのサービスとしてのエロを描いている場合が多 いように感じます。
需要と供給の問題なのでそれが悪いというわけではないです。
しかし、魔女コヨは性描写と性以外の様々なしがらみ、どちらも無くては話が 成り立たちません。
その為がっつりエロ描写があるので、万人にお薦めできるとは言えないのですが…
個人的にやおいに求めているテーマのひとつに、子供を生まないセックスをして、そこから何が生まれるのか?何も生まれないのか?というのがあって、それは藤たまき先生の『アナトミア』での、男とセックスをした少年が「僕は女ではないはずなのに」何かを生む夢を見た、という描写がすごくしっくりくるのですが、同じ類のテーマを魔女コヨからは感じました。
コヨーテは包容力のまったくない男です。 シェリルは仲間と共に助け合い寄りかかりながら旅をしています。
女性が抱く、男性に全てを委ねて寄りかかってしまいたい願望は、コヨーテとの関係では終わりを意味します。重荷になったらきっとお互いに疲れて、嫌になってしまうのは目に見えています。
まあ、若干重荷を背負うことにはなるのですが、その先が最も盛り上がるところなのでそこは実際に読んで頂きたいです。
なので、これは少女のシェリルの大人になる、自立の物語でもあります。
ひとつの感情はずっと同じに続くものではないけれど、だからといってそれは無駄なのか、それとも何かを生むのか。
何でも愛があるからいいよねって簡単にいうけど、愛ってそもそも何を指していうのか。
大人になって読むからこそ面白い、すごくビターな、生き方について考えてしまうような作品でした。
携帯でも読めるので移動しながらとか一気に読んでしまったんですが、もう、ラスト付近は号泣衝撃号泣の連続でして…。
登場人物の感情の機微や些細な描写ひとつひとつ本当は語ってしまいたいくらい表現が素晴らしいです。
構成がトリッキーに作ってあり、第一話目では恋愛小説がどうというよりも幻想怪奇小説っぽい雰囲気で面白いなあ…という純粋な動機で読み進めてしまいました。
ものすご~く長くなってしまいましたが、絶賛お薦め中なので、是非18歳以上の方は読んでみて下さい。
先ほどメールボックスの未送信フォルダーを見たら2年前に送ったと思っていた熱烈な感想メールが出てきて愕然としてのご紹介でした。 私のパッション届いてなかった。
(追記)…とブログに書いたところ、後日作者様からメールを頂けたり、前ブログでは読者様からコメント頂けたりと感激でした。 オンライン小説は商業小説と違ってファン同士でお話もなかなかしにくいので凄く嬉しかったです。
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