

シュルレアリスムの概念を知らない頃に読み、不可視の、しかし絶対的に存在するある一定の真実について刻々と描写してある本書に不可思議な感覚を覚えました。
それは著者アルトーの視界、アルトーにとっての真実の記述でした。
その記述は形而上のヘリオガバルスの姿を探るように旋回し可視の事実に近づくこともあれば、また彼にのみ見える事実へと蛇行するように描写されます。
私にとって本書では、ヘリオガバルスは不在です。
しかしアルトーの思考の軌跡を追っていればおのずと目の眩むような光に翳る彼の姿が、彼の衣の裾が、鮮烈な残像が視えるのです。
人生を変えた一冊でした。